<参考25>  六郷川の目標となる建造物


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六郷側の景観に比較的良く写り、遠くから大体の位置を推し量る目安となる建造物には以下のようなものがある。

 
(1) NEC玉川ルネッサンスシティビル
(右岸ガス橋上手より上流丸子方面を望む)
(左岸ガス橋下手の河川敷より上流方面)
(川崎市中原区中丸子:品鶴線渡線橋より)
(左岸:鵜の木地先堤防上から)

NEC玉川事業所は丸子橋の下手近くの右岸堤防から500メートルほどの場所にある。南武線向河原駅の西側に隣接した一帯。本工場のある主要部の住所は川崎市中原区下沼部だが、北側(上工場の北側部分:南武線と横須賀線が交叉する三角地)に「上丸子」の町名が残っている。近隣に丸子の付く町名は8町あり、そのうち上丸子の付く町名は3つあるが、純粋に「上丸子」というのはNEC玉川事業所内のここだけである。(ここは戦時中軍需工場進出の一環として、NECが当地に移ったとき敷地の中に取込まれたところで、工場敷地内であったため周囲の町名改正とかかわりなく旧村名が残ったといわれている。)
南武線向河原駅の川側は下沼部というが、もともと下沼部の本村は左岸側にあった。昔多摩川の流路は半環状にこの地を取り囲み、ここは荏原郡下沼部と地続きの河原地だった。その後流路が東に移って当地は分断され、本村からは「川向いの河原」となり、「新編武蔵風土記稿」には「小名 向河原 川を隔てて飛地なる所を云う」と記されている。
左岸の下沼部は明治の町村合併によって新しく出来た「調布村」の大字となり、昭和7年以降は「田園調布」と名前を変えた。右岸の飛地は明治45年の府県境界変更によって神奈川県に編入され、橘樹郡御幸村大字下沼部となり本村名を引継いだ格好になった。昭和2年に開通したJR南武線は当地の駅名を「向河原」としたが、江戸時代から通称地名として親しまれてきた呼び名が駅名として残されたものである。
このように多摩川下流では、左右両岸で同じ地名という例はほかに幾つもあり、いずれも多摩川の流路変遷に起因するものと考えられている。

玉川事業所南区域(本工場側)内の、向河原駅前道路に面した一画に高層ビルが建築されている。NEC創立100周年記念事業の一環として建設が始まった自社ビルで、一棟目は2000年初頭に竣工した。地上110メートルはこの界隈では並ぶものがない高さ。屋上の川側に円盤のような平たい構造物があることが特徴。夜間は屋上に10灯ほどの赤灯が点滅し、識別度は際立って優れている。(近隣の高層ビルとしては、武蔵小杉駅前に「武蔵小杉タワーブレイス」という名の、少し黒っぽく見える複合ビルがある。100メートル程度の高さがあり、一緒に見えることも多いが、距離がやゝ遠いせいかNECのビルよりはかなり低く見え紛れはない。[No.21C] でNECの右側に見えている。)
NECでは最新技術の粋を集めたこのエコロジーオフィスビルを「NEC玉川ルネッサンスシティ」と呼んでいる。玉川ルネッサンスシティは現在第三期工事に入っていて、一棟目の北側に隣接して建設中の二棟目(2004年春に完成予定)は地上160メートルの高さになるらしい。(東京には200メートルを超える超高層ビルが何棟もあり、横浜のランドマークタワーは300メートル近いが、川崎では160メートルは最高層ビルになるのではないか。写真はいずれも2004年に入ってからのものだが、二棟目はまだ建設途上にあり、撮影時期が異なるため高さが違っている。)
この建物は正確にいうと川岸からは少し入る位置になるが、遠くから見た場合には、このビルを丸子方面と考えて大きな間違いではない。

 
(2) 多摩川清掃工場
(右岸ガス橋上手より:塗装前)
(左岸ガス橋下手より:塗装後)

ガス橋と多摩川大橋の中間ややガス橋寄りの左岸にある。大田区の矢口と下丸子の境界辺りになる。堤防の下は都道ガス橋大師橋線が通っているが、工場はこの道路に面して建てられており、巨大な煙突は川側にあるので、この煙突は川に密接してあると解釈してよい。夜間は頂上に赤灯2灯が点灯する。
2002年秋にそれまでのベージュ色から塗装し直され、上部がブルーで下部がブラウンになる6色のグラディエーションに配色された。煙突や鉄塔あるいは工事中のクレーンなどは、超高層ビルに比べると見え難く、航空機にとっては危険度が高いため、識別のための規制は厳しいと聞いたことがある。
右岸側でこの川下側にあるラジオ日本(RF)の送信アンテナは紅白に塗られている。この煙突も工場が昭和36年(1961)に初めて稼動した当時には、紅白に塗られていたらしいが記憶にはない。鉄塔のたぐいは悉くが紅白に塗られていると言って過言ではないが、近年この近辺では紅白に塗られた煙突は見かけない。この煙突は間近で見ればそそりたって見えるが、実際には航空障害になるほどの高さは無いのかもしれない。

 
(3) かわさきテクノピア
(六郷橋上より)
(右岸戸手町地先堤防上から)
(府中街道側からソリッドスクウェアを見上げる)

六郷橋から600メートルほど上手の右岸にある。JR京浜東北線の上手側に隣接している。住所は川崎市幸区堀川町。
当地は明治39年に横浜製糖(後の明治製糖)が設立された所で、2年後には隣に東京電気川崎工場(後の東芝)ができ、川崎に於ける近代工業発祥の地となった場所である。
堤防下は府中街道が走っており、今ではこの道路際からJR川崎駅方面に向け、かわさきテクノピアビル群が続く。川に面した1画には、前面右から東芝ビル、(昭和63年にリクルート疑惑が暴露される発端となった)リクルートビル、興和ビルの3棟があり、背後に第二期工事として作られたソリッドスクウェア(ハの字型に対称に建つ東西2館から成る)がある。遠くから見るとこれらの数棟の高層ビルが密集し塊となって見える。
ソリッドスクウェアは地上105メートルだが、ここのビル群は川岸一帯では群を抜いて高く、高層ビルがかたまって見えるので遠くからでもすぐ分かる。川に隣接していると言っても過言ではない近さにあるので、六郷橋方面の目安になる。川に面した東芝ビルはやや低く、夜間は他の4棟でそれぞれ屋上に数灯の赤灯を点灯乃至点滅させる。

 
(4) NTTドコモ川崎ビル (附:ミューザ川崎)
(JR線路の反対側(ミューザ側)から、線路越しにNTTドコモ川崎ビルの上部をズーム)
(以下の3枚は左岸河口から7キロ地点の堤防上から、左手前はテクノピアの東芝ビル)
(JR西口駅前再開発によって変貌したビル景色:ミューザ完成直後、ドコモ側がホール)
(JR川崎駅西口駅前で(左端は東口の丸井):2003年12月19日業務棟オープンの頃)
(ホール棟落成後のミューザ川崎夜景:手前下は府中街道に設置された最新の歩道橋)

NTTドコモ川崎ビルの住所は川崎区日進町、第一京浜国道と元木の交差点で交叉する市電通りが、JR東海道線をくぐる手前の角(JR線沿い)にある。JR川崎駅の300メートルほど鶴見側になり、六郷川の右岸からは1.1キロメートル余り離れている。六郷川堤防上のテクノピアの正面になる位置からは、丁度その奥にあたるため見えなくなる。(このビルは2002年に出来たビルで、地図によっては未だ載っていない場合がある。)
川から遠いこのビルが目標になるのは、屋上に3塔を擁するその外観が極めて特徴的で、すぐにそれと分かることによる。3塔の並びは川とほぼ直交している。(左岸の堤防側からでは、京急の鉄橋下辺りで3塔が1塔に重なって見える)。平素六郷近辺からばかり見ていると、3塔が接近したビルの形で印象付けられてしまう。一方遠く下沼部の方(上記1のNECビルのある辺り)から見ると、このビルの正面が見えることになるが、3塔が疎(まば)らに展開した姿は、まるで違う建物かと見紛うほどである(例 [No.211])。 夜間は3塔の各頂上に赤色灯を点滅させるほか、3塔それぞれに白色の帯状照明を施すなど派手な印象を与える。
このビルは高さはそれほどでもないが、上流側(丸子方面)下流側(羽田方面:例 [No.73D])を問わずかなり遠くから見えるのを確認している。JR川崎駅は大体その辺りということが分かり、3塔の開き具合からある程度方向感も得られる。またテクノピアとの直線距離が約1キロという点で、(上流側から見た場合)距離感の目安としても利用し得る。

このビルとJRを挟んで向合う大宮町地区は、既に再開発が進行中であり、そこと六郷川の間(テクノピアの裏側)に当たる東芝川崎事業所の跡地も大きい。この2ヵ所を中心にJR川崎駅西口一帯が再開発され、高層ビルが多く建設されることになれば、見通しなどの状況は今後かなり変わる可能性がある。
2枚目の写真は2002年7月、3枚目の写真は2003年9月の撮影。JR橋梁上手数百メートルの位置で左岸の堤防上から川越しに見たもの。2003年にドコモビルの右向いに建設された巨大ビルは、都市基盤整備公団が開発する川崎駅西口市街地再開発事業の中心(川崎市幸区大宮町)で、 MUZA (ミューザ) KAWASAKI と呼ばれる複合ビル。高層で川の方からもよく見えるセントラルタワーは、普通再開発地域によくある業務棟(オフィス、ショップ、レストランなど)だが、この建物の特徴は業務棟だけでなく、ドコモビルに面した側にホール棟が併設されていることである。ミューザ川崎シンフォニーホールは、2000席を擁するワインヤード形式のコンサートホールで、そもそもミューザという公募名は、「音楽座」というような意味で付けられた造語らしい。
4枚目の写真は2004年8月時点で、同じ場所から撮った夜景(夕刻7時半)。MUZA KAWASAKI は業務棟が2003年12月にオープンしたが、ホールの方は市制80周年にあたる翌年7月に落成し、こけら落とし公演として、東京交響楽団がマーラーの8番を演奏した(ハズ)。
NTT DoCoMo、MUZA KAWASAKI とも最頂部は地上130メートルで、双方の高さはほぼ匹敵している。ミューザの西側は都市公団の住棟群(アーベインビオ川崎)になっている。多摩川大橋方向から見ると、ミューザ川崎セントラルタワーに隣接して高層マンションが1棟見えるが、アーベインビオ川崎の3号棟で地上124メートルある。
なお川(右岸)のすぐ裏手には府中街道(市道:幸多摩線分離前)が通っており、この道路周辺も工事中だが、2004年になって丁度この方向の位置に近代的な歩道橋が架けられた。夜景で下の方に見えている折れ筋はこの歩道橋で、ミューザ川崎とは実際には1キロメートルほども離れている。

 
(5) 新川崎三井ビル と サウザンドタワー
(左岸:矢口橋より下平間方面を見る)
(左岸:JR六郷橋梁上手の堤防上より3塔を望む)
(品鶴線側から見上げた新川崎三井ビル)
(新川崎三井ビルの方向から見たサウザンドタワー)

新川崎三井ビルはJR品鶴線(横須賀線)の新川崎駅と、JR南武線の鹿島田駅の中間(駅から150メートル程南)に、1989年に出来たオフィスビルで、住所は川崎市幸区鹿島田になる。((1)のNEC玉川事業所から2.6kmほど南にあたる。)線路と直角に並ぶイーストタワーとウエストタワーの2棟から成るため、通称ツインタワーと呼ばれている。
ガス橋から500メートル程下った右岸堤防が最短位置で、1.1キロメートル余りの距離になる。ガス橋からの直線距離は1.3キロメートル程度。2棟は概ね東西に並ぶが、正確には多摩川大橋の下から見た場合に2棟が1棟に重なって見えるような方向に位置しており、最寄の堤防に対して完全に直角な配置ではない。(1番目の写真を撮っている「矢口橋」は、左岸の多摩川大橋とガス橋の中間やや多摩川大橋寄りで、河川敷を横切る細い水路を跨ぐ橋)

かつて下平間の界隈には他に高層ビルが無かったため、この新川崎三井ビル(地上134メートル)は、六郷川の右岸側で非常に目立つ存在になっていたが、六郷川が複雑に蛇行する地域に近く、北東側1.1kmで堤防に達する一方、南東側でも2.1kmで戸手地区堤防に達する位置になり、遠方から見た場合一応平間方面の目安とはされるが、このビルが良く見える割には方向感が得にくいというのが実感だ。
新川崎三井ビルに隣接した南側はパークシティ・新川崎と呼ばれ、2番目の写真で左側に見える背の低い2棟はパークシティの中のマンション棟である。南武線を挟んでパークシティの向い側(幸区新塚越)に新しくサウザンドシティが作られている。サウザンドシティは住宅供給公社が開発する団地で、南武線鹿島田駅の南側、南武線と市道下平間2号線(大師堀通り)との間に広がる。シティの名前は総戸数1000戸を誇るその団地の規模に由来する。
サウザンドタワーはサウザンドシティの1号館という位置付けで、地上41階建て469戸を擁する超高層マンション。2002年12月に完成し入居が始まった。多摩川の方から見ると新川崎三井ビルよりはっきり高いように見えるが、実際には1メートル高いだけの地上135メートルである。
サウザンドタワーは南武線を挟んではいるが、新川崎三井ビルディングの筋向いに当り、双方は1番目の写真から見て想像するよりは、実際には遥かに近い距離にある。3棟は「へ」の字の位置関係にあり、その見え方によって方向感の参考になるかも知れない。




以下航空障害灯について補足しておく。
航空法により、地表または水面から60m以上の高さの建造物(物件)には、国土交通省令で定めるところによる、航空障害灯を設置しなければならない。航空障害灯は施行規則127条の基準により以下の3通りとされる。

高さ150m以上:高光度航空障害灯=白の閃光
高さ90m以上:中光度航空障害灯=赤の明滅
高さ60m以上:低光度航空障害灯=赤の不動光。

但し以上の規定は煙突、鉄塔、ガスタンクなどの物件に適用し、一般のビルについては要件が各1ランクずつ軽減される。
平成13年に国土交通省より、高層ビルに設置する航空障害灯の設置基準を緩和する省令が公布され、同年7月27日から施行された。
改正省令によれば、60m以上150m未満の高さの物件については、物件の側面への設置は不要となり、物件の頂上にのみ低光度航空障害灯を設置すればよいことになった。また150m以上の物件については、頂上から順にほぼ等間隔で中光度航空障害灯及び低光度航空障害灯を交互に設置すればよいことになり、中光度航空障害灯(赤色明滅)の設置を要する物件の条件が、90m以上の高さの物件から150m以上の高さの物件に緩和された。

航空障害灯の例 左からNEC,煙突,キヤノンの順 (多摩川大橋下手より)

因みに本編掲載写真に出てくる主要な物件についての現況は以下のようになっている。

[白色閃光]
大師橋斜張橋の主塔

[赤色明滅]
上丸子のNEC玉川ルネッサンスシティ、鹿島田の新川崎三井ビル、小向のRF送信電波塔、テクノピアのソリッドスクェア、JR川崎駅先のNTTドコモビル、JR川崎駅手前のタワーリバーク、川崎市第3市庁舎等

[赤色不動光]
ガス橋のキヤノン本社ビル、玉川清掃工場の煙突、多摩川大橋の川崎総合科学高校、多摩川大橋下手のトミンタワー、河原町堤防上のマンション(グランエステ川崎ツィンタワー)、川崎区役所本庁舎等



   [参考集・目次]