<参考26>  河川敷の春から初夏にかけての草木と花


     【バラ科】  バラ属 : テリハノイバラ

 

テリハノイバラはバラ属の落葉低木。つる性で通常地を這ったり崖に垂れ下がるなどの姿で見られるらしいが、多摩川のこの辺りの形態は必ずしもそうばかりではなく、こんもりと塊り状に枝を絡めて盛り上がっているようなケースも見られる。
この特集の範囲では、六郷橋の川下側ではかなり大きな一株が川岸近くにある以外には殆ど見ず、川上側の護岸の雑草帯の中に多く見られる。
多摩川緑地の水路側の土手では、瓢箪池の裏に下手でオシロイバナや野化したランタナなどと混在してあり、上手では水路に面して密生しているが、足場が悪くこちらは全体を確認できない。さらに上手の階段護岸の下の方に数株があり、最も良く確認できる株はずっと多摩川大橋の方に寄った位置(トミンタワーの辺り)の護岸のかなり下段にある。

テリハノイバラはその名の通り、葉の表面が厚く光沢があって、寒風などの環境耐性の強さを感じさせる特徴がある。左の写真は殆どがヤマハボートに近い護岸にあるこの株から撮った。上から7枚は全て5月初めの花時の写真で1枚目が護岸上から見た全景になる。丈は2メートル弱程度か。
花弁は白く、咲きたての雄蕊は葯がオレンジに近い黄色をしているが、同時に黒褐色に変わっているものも多い。雄蕊が黒褐色に見える花は既に花粉を失った花なのではないだろうか。







都民タワーの近くになるこのテリハノウバラの木は、水際にあって護岸を下りていった位置になるが、界隈では最もまともな大きさを持った株で、春の花も殆どここの木で撮っていた。
ところが7月初旬に見たところ、このテリハノイバラはアレチウリに乗り掛かられ、部分的には枯れ始める兆候が出ていた。
このことを発見した時、取り敢えず上に覆いかぶさっていた蔓を、出来る範囲で取除くことを行った。多摩川大橋の上手にはクズやアレチウリが多く、川岸の木の多くはその餌食となっている。然しこの辺りではクズは無くアレチウリも少ないので、この状態は数少ない事例で、思い掛けない出来事だった。


これは7月下旬に撮ったもので、テリハノイバラは青葉を回復していて、この時はアレチウリを取除いた効果が上がったことを見てすっかり安心しきっていた。


ところが9月初旬に、久々に当地を訪れたところ、テリハノイバラの木は又もやアレチウリに覆われていて、実を付けた枝は逃れるように隙を潜り抜けて伸びていたが、木の全体は瀕死の状態という有様だった。
確かに7月の処理は蔓を取除いただけで、甘く考えていたことを思い知った。そこで今回は出直すこととし、数日後に、藪に踏み込める衣服を用意し、作業用の手袋などの体勢を整えて、本格的にアレチウリを全撤去することにした。下手側から水辺側に掛けてはヨシなどが密着し、かなり困難な作業となったが、蔓を取除くことより、アレチウリの根元を見極め、それらを悉く引き抜くことに全力を挙げた。根元を引き抜くことで、結果的に蔓も殆どを取除くことが出来た。取ったものはその辺に置くと、又蘇る恐れがあるので、すべて川に放った。

アレチウリは第二次指定で特定外来生物に指定され、特定外来生物被害防止法の適用対象になっている。これを川に放ったことは法に触れる恐れがあるかも知れないが、正しく廃棄する方法が分からなかったこともあり、ここは良い子ぶらずに、引き抜いたものを片っ端から川に放り投げてしまった。


その後は、このテリハノイバラが蘇るかどうか、気にして状態を見守った。
これは10月初旬で、全体に緑が復活してきた様子が分かる。赤い実もあちこちに見られるようになり、アレチウリの気配も全く窺われず、9月の救済が成功したと安心した。



これは10月下旬で、赤い実がピラカンサと並ぶほど綺麗に見えるようになった。

ここからの写真4枚は11月中旬で、葉に緑が蘇り、赤い実の色が映えてとても綺麗に見えるようになった。この時期はピラカンサやクコなど、この界隈でも結構色々な赤い実が見られるが、くすみの取れた赤いこのテリハノイバラの実も野生的で魅力的だった。




これは翌2014年の2月初旬に、新しく芽生えた部分の葉を撮った。

これは4月初旬で、すっかり緑に被われ、大きさも幾分か昨年より大きくなったように感じる。


これは2014年に撮ったトミンタワー前のテリハノイバラだが、すっかり大きくなって護岸の最下段しまで張り出し、ヨシを追いやってヨシ共々で護岸の最下段のコンクリートを半分ほど塞ぐようになっている。ここは満潮時には冠水するような高さだが、平時に通行が確保されなければならないとすれば、いずれ張り出した部分は刈り取られるようになるだろう。

今年も綺麗な花が咲いて、これで一年間無事に一巡し、以後は繰り返しになるので、観察はとりあえずここで終わることにする。





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