<参考26>  河川敷の春から初夏にかけての草木と花


     【マメ科】  イタチハギ属 : イタチハギ

 

六郷橋の下、下手側の荒れ地にトウネズミモチの大木が密接して聳えているが、その並びの河川敷側の端に、一寸変わった花をつける数メートル丈のマメ科の中低木、イタチハギがある。
葉は典型的なマメ科らしい長楕円形の羽状複葉で、小葉は5〜10対。マメ科の木本はあまり見る機会がなく珍しいものだが、花も青いうちは目立たず、木が周囲の樹木に埋もれてしまったような感じなので、日頃はその存在に気付くこともない。
然し5月には独特な棒状の花座のようなものを多く出して奇妙な様相を呈するようになるので、これは何だと思わず注意を喚起されるようになる。
イタチハギは北米原産。法面の緑化に安易に外来種が導入されたて植えられた時代に、これも積極的に輸入され栽培されるようになったという。花は枝先に10〜20センチ程度の穂上の花序を伸ばし、黒紫色の蝶形花が密集する。(この様子からクロバナエンジュという別名がある。)

外来種ならではの弊害がいろいろ指摘されるようになる一方、根の土壌固定力が強く、マメ科特有の窒素固定による肥料木として、法面緑化に利用されて有用であるという側面も捨てがたいらしく、結局「要注意外来生物」の指定にとどまり、特段の規制を受けるまでには至っていない。
ただ、日本生態学会が定めた”日本の侵略的外来種ワースト100”の維管束植物欄に、アレチウリ、オオオナモミ、オオキンケイギク、オオブタクサ、セイタカアワダチソウなどと並びイタチハギも選定されている。

ここのイタチハギは2014年に選別して全て駆除されたようで、初夏の頃にはすっかり姿を消していた。トウネズミモチなどが結構混み合っていた場所だったが、イタチハギだけをそっくり引き抜いたようだ。







すっかり駆除されたと思われていた当地のイタチハギだが、2014年7月初めには左の写真のように、既にマメ科特有の隠し様の無い葉が見られる状態で、部分的に僅かに取り残しがあったようだった。そもそも誰がどの程度の確信をもって駆除に踏み切ったのかは全く不明で、駆除の目的も定かでなく、完璧に行われるようなことではなかったのかもしれない。

 


 

     【マメ科】  フジ属 : フジ (参考)

 

多摩川大橋の左岸袂、下手にかつてスケボー公園などと呼ばれていた広場があり、その後整備されゲートボール場などを擁する公園風の場所になった。橋からこの公園までの間の河川敷は岸にコンクリートで非常時船着き場が作られ、陸はヘリポートとしての空き地が確保されている。この場所の堤防側に一部私有地が残されていて、草木が鬱蒼とする中に資材置き場のような住い付きの簡易的な建屋がある。
何年か前にここから出火した火事騒ぎがあった。周囲にはトウネズミモチの大きな木が数本あって、半ば木に囲まれたような場所なので、堤防を越えて延焼するというような恐れは感じられなかったが、本格的な火災で、消防が船着き場にポンプ車を固定して放水する演習もどきの光景を目撃した。建物はほゞ全焼という感じになったが、木は殆ど燃えることはなかった。
この場所のトウネズミモチの外側にフジがあって、トウネズミモチを土台に這い上がったような体裁で、4月中旬には綺麗な花を咲かせ、植物園の藤棚で見るような房が長く垂れ下がった姿ではないが、こんなところで意外にも結構野性的なフジの姿を見ることが出来る。

多摩川の高水敷は、内務省が下流部の直轄改修工事に入る前に、民有地はすべて買収して国有地にしたとされているが、今でもこのような私有地風の区画が2,3残されている。電線も引き込まれていて飲料の自販機まで据えられている。こんな場所なので深く立ち入るのは憚られ、強いて確認はしていないが、蔓はおそらく右巻きでヤマフジでなくフジだろうと思う。







(戻る) 


   [参考集・目次]