<参考26> 河川敷の春から初夏にかけての草木と花
【ケシ科】 クサノオウ属 : クサノオウ
写真左の1番上は2013年4月9日、2番目3番目は同年4月25日の撮影。
【ケシ科】 ケシ属 : ナガミヒナゲシ・アイスランドポピー (参考)・ヒナゲシ (参考)
左の写真は多摩川緑地の東端に大田区が設けている花壇に植えられたものを撮った。2003年3月下旬で、この年にはその後ヒナゲシなども植えられたが、2003年以来この歌壇にケシ類が植えられているのを見たことはない。アイスランドポピーではオレンジ色が綺麗で多く使われるが、野生種は黄色と白色だけとのことである。
ヨーロッパ原産のケシ科の一年草。ケシ類では蕾は長丸い球体で、蕾のうちはが皆下を向き、全体が毛だらけという独特な印象がある。咲く時になると上を向いて花弁を開く。
そんな訳で、以前は京急から六郷橋へは本流の岸に沿う散策路があったのだが、いつしか草薮に覆われて通行不能になりやがて通路は消失した。今では少し本流から離れた場所で、HLがいるところが入り口のようになっていて、ここから入ってしばらく行くと、ゴルフ裏のHL部落の方へ行く道と、昔の本流沿いの道で六郷橋下に出る道の分岐点に出る。京急の鉄橋下を入って、この分岐点にでるまでの間に、数カ所クサノオウが少しまとまって咲いている場所がある。
クサノオウの花に特徴的なことに、子房が細長く棒状に上に伸び、そのまま果実の莢(さや)になって中に種子を蓄えることで、花の段階でも中心のメシベが太い棒状になって伸びている姿が確認できる。種子にはエライソームと呼ばれる栄養分が付着していて、蟻に巣まで持ち帰ってもらうことで、捨てられた種子が生息圏を広げていくような仕組みになっている。
一方ケリドニン、プロトピン等この草に含まれるアルカロイドを利用した薬草としても古くから知られ(漢方では「白屈菜:はっくさい」と言う)、乾燥させた形で主として皮膚疾患を対象に使用したようだが、塗り用だけではなく飲用にも用いられたらしい。
欧米でもモルヒネの代用として癌などの痛み止めに使用された経歴がある他、現在でも「グレーターセランディン」と称する飲用の民間薬エキス剤が販売されているとの記載も目にする。様々な薬効が期待されて使われているようだが、毒性が強いため日本では現在は使用されていないとのこと。
茎は中空で、茎を折ったり葉を傷つけたりすると黄色の汁が出る。花を摘んだりしてうっかりこの汁に触らないよう心掛けるべきであるが、何せ毒性が強いとされているので草自体に触らないようにこの草を覚えておく方が無難である。
クサノオウは1年生の草本だが、この地の2か所にあるクサノオクの生息状況は安定していて、ここ数年4月には決まって黄色い花を付け、株数の規模は僅かながら拡大する傾向にある。
花が散った後に残る果実を芥子坊主(けしぼうず)というが、ひとつの芥子坊主の中には小さな種子が1500粒ほど含まれていると言われ、一株が散らす種子の数は数万を超える数に達する。ナガミヒナゲシはアレロパシー性(他の生物の生育に対する阻害活性)が強いとされるが、河川敷では刈られるせいか群落を形成しているような状態は見たことがない。
ナガミヒナゲシは通常花弁に覆われたような花の状態なので、あまり綺麗な花の写真ということにはまらまいが、中を見せている格好で珍しい写真ではないだろうかと思って撮った。
上の3枚は2003年5月で、アイスランドポピーが植えられた後にヒナゲシが植えられた。この年のヒナゲシは多彩で綺麗だったので印象に残っている。
下の2枚は2005年4月で、JR側の多摩川緑地の端に作られたこの花壇に、ヒナゲシが植えられたのはこの年が最後になった。その後花壇自身は幾らか縮小され、植えられるものも平凡なものな変わった。