<参考26>  河川敷の春から初夏にかけての草木と花


     【クマツヅラ科】  ランタナ属 (シチヘンゲ属) : ランタナ

 

ランタナは小さいものをよく目にするので草本と見間違い易いが、常緑の小低木で木本である。

国立環境研究所の侵入生物データベースによれば、原産地は南米で日本には1865年頃渡来し、小笠原や沖縄に移入分布しているとされる。初夏から可愛い花を咲かせるので、観賞用として導入されたものと思われ、実際世界中で栽培されているようだが、野生化したものは、立地条件に対する適応性が大きく、多少日陰でも良く生育するとあって、熱帯地方ではよく繁殖し、在来種に対する影響の他、畑作物や牧草と競合、果実は有毒で種子まで食べると子供が死ぬと言われる。

多種の虫、菌の寄主、ネズミの巣となるなどのこともあって、繁殖の盛んな熱帯地方などでは相当な害草とされている。(日本では外来生物法で要注意外来生物に指定されているが)、国際自然保護連合(IUCN)の種の保全委員会が定めた”世界の侵略的外来種ワースト100’に記載されているほどである。(因みに100種の内、陸上植物としては、イタドリ、クズ、チガヤなどが指定され、そうした中にランタナも含まれている。
序に日本生態学会が定めた”日本の侵略的外来種ワースト100”の維管束植物欄には、アレチウリ、イタチハギ、オオオナモミ、オオキンケイギク、オオブタクサ、カモガヤ、キショウブ、セイタカアワダチソウ、ハルジオン、ヒメジョオンなどが選定されているが、イタドリ、クズ、チガヤ、ランタナは全て入っていない。

ランタナは日本でも結構園芸種として広まっていて、花の色も様々なものが出まわっている。この写真の花は、多摩川緑地にある瓢箪池の後ろになる散策路沿いで、本流側の土手になっている傾斜地に、テリハノイバラなどと密接して野化しているものである。熱帯産なので関東地方での地植えでは越冬出来ないのではないかという見方もあるようだが、ここにあるランタナは野生化していて、毎年結構綺麗な花を咲かせている。
花の色は蕾から開いた直後には、薄い橙色味を帯びた色をしているが、咲ききると次第に橙色からピンク色に変わっていく。園芸種になって様々な色のものがあるようで、マンションの玄関脇の小さな花壇などで、赤、橙、黄色のような派手な色のものを見たりするが、ここにあるこのオレンジ系の色がランタナの元々のオーソドックスな色ではないかと思われる。
蕾は花弁が四角く畳まれた状態のままで大きくなってくる。他に類を見ないこの特異な姿には何故か感心させられる趣があり若い花に惹かれる。

写真は上の4枚は2013年の6月末から7月初めの頃、青い実は8月初旬、熟れた実は9月初旬、その下の写真はは2014年6,7月に再度撮影したもの。花期は初夏から晩秋までと長く、先のものから順次果実となっていくので、花と果実が両方とも見られる期間も結構長い。この花の場合、忘れていても思い出してからで間に合うので、何かを撮り損ねるということは心配しなくてよい。




2014年の6月中旬に花を撮ったが、同じ月の下旬には、花は殆ど無く全体に実だらけだった。流石に熟したものではなく、緑色のものばかりだったが、この時期に実が一杯出来ているということは、かなり早くから花が咲いていた筈で、一応アジサイの頃に咲くというように言われているが、元々が熱帯の植物とすれば、あまり季節の対応を備えているとも考えにくく、陽気が上がっていれば適当に咲いていたりすることは十分考えられる。
今年撮った花の写真をよく見ると、後ろに実がのぞいている。マサキの花を撮るために通り掛かった都合で撮ったが、ランタナは昨年十分撮っているからもういいやという気持ちがあって、よく見ていなかったが、この時には既に多くの実が出来ていたのだろう。7月中旬になると、また結構多くの花が咲いてい、半ば熟した実と同居していた。

ランタナは花の色が変わっていくことで、和名の別名として「シチヘンゲ」(七変化)とも呼ばれる。
学名ではランタナというのは属名で、わが国で通常ランタナと呼ばれているのは、ランタナ・カマラ(L.camara)のことである。日本で扱われている他の原種としては、匍匐するタイプのコバナランタナ(L.montevidensis)、があり、園芸種はこれらをいろいろに組みあわせて作られているようだが、色が変化するのはカマラ種の特質とされる。

2014年にはこの土手の法面はかなり大幅に除草されたが、ランタナは殆ど影響を受けなかった。不思議に思ってよく見極めてみたところ、土手の法面に生えていると思ったのは誤りで、根本は土手の上面から出ていて、それが法面に垂れ下がってきているため、テリハノイバラの枝などと絡み合い、一寸見には法面から出ているように見えていたのだと分かった。






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