<参考26>  河川敷の春から初夏にかけての草木と花


     【ブドウ科】  ヤブガラシ属 : ヤブガラシ

 

ヤブガラシは蔓状の多年草で、この界隈には至る所で見られる。中央の一枚が大きい5枚の小葉からなる特徴的な複葉で、一度覚えると一目見てすぐそれと分かる。
名前ほどには繁殖力が強いようには思えず、アレチウリやヘクソカズラのような大きい群落になって、藪を枯らしてしまうほどにはびこっているような存在にはならない。
初夏から横に広がった平たい独特な集合花序の花を付ける。できはじめは全てが薄緑色の丸い蕾で、やがてぽつぽつと咲き始めるが、開いた4枚の花弁と直立する4本の雄蕊はすぐに脱落してしまい、通常目にするのはオレンジ色の花盤と中央に立つメシベ一本の姿である。花盤は蜜が多く、蟻がたかっている場合が多い。やがて脱色してピンク色に変わり果実に変化していく。

ヤブガラシは多摩川汽水域に広く存在する。界隈で最も集合して見られるのは六郷橋の下の本流側で、2009年7月初めにそこで撮った写真を先頭に載せたが、あちこちに散開して見られるので、次からの3枚は敢えてサンプリングを散らしてみた。
2枚目は右岸殿町の多摩運河近傍の堤防脇で2009年7月初め、3枚目は2013年6月末で西六郷の土手上、4枚目は2013年7月中旬で南六郷の雑色ポンプ所を挟んだ反対側の本流に沿う荒れ地で撮った。どこのものも特に違いがある訳ではない。



2014年7月初旬にヤブガラシの花を撮影すべく六郷橋緑地に向かった。アカメガシワの雌花の子房が膨らみ、緑色の球の周りじゅうに棘が立ち、メシベの先端の三俣が赤い名残を留める姿を撮影しきると、帰り道がてらヤブガラシの花を徹底的に見て回った。
オシベを留めている花は殆ど見付からなかったが、花びらの残るものは猶更少なかった。僅かに花びらの残るものも、下方に垂れ下がるような恰好になっていて、今にも脱落するかというような感じだった。荒れ地沿いの散策路から六郷橋下のヤブガラシの藪まで、拾い集めたものの中から左に3枚を載せた。

残念ながら4枚の花弁を横に出したような完璧なものは見いだせなかったが、オシベがどんな位置に付き、葯の大きさはどの程度か、オシベが未だ残る花ではメシベが伸びきっておらず短い状態にあるなどのことは分かる。



その後あちこちでヤブガラシの花を見る度に観察を続けたが、花弁やオシベの残る花を見付けることは全く出来ず、むしろ前に花弁が垂れ下がるものの、オシベの残った花を見付けることが出来たことの方が例外的だったと感じるようになった。
ところが梅雨明けして暑さが一段と厳しくなった7月下旬に、遠出を控え足元の地域を重視するようになって、多摩川緑地の水路と散策路を仕切る土手の法面で、思いがけず左に載せたような花をキャッチした。中には4枚の花弁がかなり横に出て、脱落寸前というほどではない花も含まれていた。


左に載せた2枚は、オシベが脱落してしまった後のメシベが伸びきった花の様子を示しているが、普通見られるのはこのようになった花である。
花盤のオレンジ色が鮮やかな花ほど若い花で、オシベが落ちて間もないような花では、蜜が溢れるほど満ちて、蟻がたかっている場合が多い。


ここから下の3枚はその後に、再度同じ場所を狙って撮り続けたもので、4枚の花弁を開き、4本のオシベを立てている花を何度もキャッチすることに成功したものである。
1,2枚目の写真は、花弁が4枚まともに付いている花を捉えたもの、3枚目の写真は花弁が既に垂れているが、右端の花は花弁が何枚か落ち、オシベの一本がまさに脱落しようとしている時期の花を捉えたところである。



ここからの2枚は再び南六郷の六郷橋緑地で、低水路際の荒れ地と河川敷を仕切る散策路沿いの藪にあるものから撮った。花柄だのあちこちから水玉のようなものが吹き出している。蜜のように見え、確かに蟻に限らず多くの昆虫を呼び寄せているが、受粉の過程はどのようなものなのだろうか。


ここから下の5枚は2014年7月末に多摩川大橋上手にできていた”ヤブガラシの藪”で撮った。夕方に近い4時半頃で、オシベのある花がこれだけまとまって見られたのは初めてだった。
ヤブガラシの花は、朝咲いて昼には散ってしまうツユクサのような咲き方ではなく、適当に咲き、オシベと花弁を落としてからメシベが伸びきり、結構永らえるのではないかと感じた。








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