<参考26>  河川敷の春から初夏にかけての草木と花


     【アブラナ科】  タネツケバナ属 : ミチタネツケバナ・タネツケバナ

 

3月初頭の春一番、河川敷の草地ではホトケノザやヒメオドリコソウなどが小さな姿でこっそり花を出し始める頃、もう成熟した姿を一杯に広げて花を付け、果実も出し始めている小さな白い花がミチタネツケバナだ。
一つ一つの花の大きさはミリオーダーでオオイヌノフグリ並なので、アブラナ科の花特有の4弁花であることなどまでは見難いが、頭状花序のような形で無限花序を形成し、花茎が立ち上がっていくので、注意して歩いていればその存在自身を見損なうことはない。
ただ注意しなければならないのは、この時期、同じような場所に、同じように小さな花を咲かせている種に、同じアブラナ科のナズナがあるので、これと見間違えないことだ。ナズナも無限花序で頭状花は似たような密集型なので、花だけを見ていては双方の区別は紛らわしい。然しナズナは逆三角形の果実を出し、俗にペンペン草と呼ばれるように、先端に花を咲かせている茎の途中に三角形の果実が、次々とぶら下がった形になるので、それが十分に見分けのポイントになる。
一方ミチタネツケバナの方の果実は、棒状の長角果で、この棒状の鞘が長く伸びるので、やがて花は多くの棒に囲まれたような様な格好になっていく。

上の写真では、花柄の長さは短く、全体が地を覆うように広がっているが、この株の場合では花柄が茎のように10センチを超えるほどに伸び、違う雰囲気を出している。


咲き始めの未だ若い状態では、蕾の周りに白い花が見られるだけで、その状態では見分けが難しい。 この花は3月中旬に入った頃の撮影で、外側の花から棒状の果実が伸び初めている。

これも同じ時期の写真だが、もうかなり長角果が伸びていて、こういうようになってくれば、もうはっきりとナズナとの区別は付く。オシベの本数がナズナの6本より少ない4本のようだが、それより蕾が密集する中心付近が赤味を帯びているのがナズナとの違いとして際立っている。

ミチタネツケバナは最近の外来種で、近年急速に広がりを見せ、在来種のタネツケバナを駆逐する勢いで心配されている。タネツケバナはやゝ湿気た場所を好み、花はミチタネツケバナより少し大きいそうだが、河川敷ではまず見ることは無いだろう。(とこの時はそう思った。)
ミチタネツケバナとの見分けは、長角果の伸び方の違いが有力とされる。即ちミチタネツケバナの長角果はいきなり真っ直ぐ上方に伸びていくが、タネツケバナの長角果はじめ斜め上方に伸びるような格好で一旦懐を明け、それから上に伸びていくような形をとる。同じ棒状の長角果ながら、真っ直ぐ伸びるか鈎形のような格好を取るかの違いがあるとされる。


 













 


 

     【アブラナ科】  ナズナ属 : ナズナ

 

ナズナも早春から咲き始め、小さな頭上花を密集させ、無限花序として果実を形成しながら茎を伸ばしていく。日本全国にあり、普通は越年草らしいが、1年草の場合もあるとされる。
春の七草の一つとして有名で、食用になるが、民間薬として薬草としても利用されていたようである。
荒地にも生えることから、荒廃した様子を形容して、「ぺんぺん草も生えない」などとして使われる。 短角果の倒三角形の平たい形が三味線の撥(ばち)に似ていて、三味線を弾いた音をペンペンということから俗にペンペン草と呼ばれたようである。
確かに子供の頃には、この草は身の回りのどこにでもあって、子供の遊びとして、多くの果実が形成された茎を千切り取って、果実を一つ一つ下に引いて皮一本でぶら下げるようにし、それを振ってシャンシャンという音を愉しんだ記憶がある。










 


 

     【アブラナ科】  キバナスズシロ属 : キバナスズシロ (ルッコラ)

 

キバナスズシロはアブラナ科の1年草。和名はダイコンの花に似て黄色いという意味だろうが、薄っすらと黄味を帯びてはいるが、花弁の色は殆ど白色と言ってよい。
欧州(特にイタリア)ではルッコラと呼ばれて、古くから葉野菜として普通に用いられてきたものらしい。サラダに混ぜて生食にされるほか、炒め物やおひたしにされたり、料理の添え物としても用いられる。種子はハーブティーになる。

日本ではイタリア料理に伴って知られるようになったが、あまり栽培されているようには見えない。

花はアブラナ科に特有の十字形で、ハマダイコンよりやゝ大き目のものもある。花弁に入る紫色の脈が独特な印象を与える。
左の3枚を撮ったのは2015年3月末で、場所は南六郷3丁目堤防の川表側法面の上部。六郷水門に近づく上手側の位置で、この近傍はほゞ、堤防拡幅工事が行われる前に、ウマノスズクサがあった場所。ウマノスズクサは工事で一掃されてしまったが、工事の上塗り用に持ち込まれた土にツメクサなどに混じってこの種子が含まれていたのだろう。花は咲いたが定着するような雰囲気ではなかった。

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