<参考26>  河川敷の春から初夏にかけての草木と花


     【キンポウゲ科】  キンポウゲ属 : キツネノボタン

 
2013年以前にはキツネノボタンは六郷界隈(多摩川緑地から六郷橋緑地)では、稀にしか見ることは無かったように思う。2007年から2008年にかけて多摩川緑地から上手の多摩川大橋方面に掛けて、堤防法面を中心に百花繚乱というほど草花が咲き乱れた時にも、キツネノボタンを見ることは無かった。然し近年になってから、キツネノボタンがこの界隈でも散発的にあちこちで見るようになった。
もともと群落を形成するようなタイプではなく、数株程度がまとまって花を咲かせるような部類と思われるが、この界隈で見られるようになった初めの頃は特にまばらだった。黄色い花は目立つので、散策中にオッと思って近付くとキク科の花では無く、キツネノボタンだったというケースが思いがけないような場所で生じ始めた。

上から3枚の写真は2013年4月16日の撮影で、場所は多摩川緑地の上手側に隣接する大田区民広場の川縁。区民広場の本流側には、多摩川緑地の方から引き続く散策路があるが、川の本流との境には荒れ地があって、散策路から水面は見えない。たまに細い道があるので、そこで分け入って川縁に出られる。川縁には添うように怪しげな小道らしきものが出来ているが、植物を探すなら、散策路側からみるよりも、川縁のこの小道を通って川側から荒れ地を見た方が収穫があることが多い。
この日も区民広場のトラックの端から川縁に出て、上手側に進んでいたところ、荒れ地側の草地にキツネノボタンの花が4〜5個見られた。時期がもう少し進むとこの辺も大型の雑草に覆われてしまう場所だが、この時期には未だ他の草はそれほど伸びてはおらず、キツネノボタンの背丈でも十分に日照が得られる状況だった。然しこんな所にキツネノボタンがあるとは思っていなかったので驚いた。


ここからの2枚は2014年4月15日の撮影で、場所は大田区民広場から上手に進んで、多摩川大橋に至る中間辺り。川裏にトミンタワーの短いスーパー堤防がある川表で、堤防坂路下のほゞ法尻辺り。この坂路の下辺の法面にはかなり安定的にキツネノボタンの群集がある。これだけまとまってあるのは六郷界隈では珍しくここだけかも知れない。とは言っても花びらがまともに揃っている模範的な花は・・となると中々無いもので、結構多くの花を見てこれを撮った。


ここからの4枚は2015年4月16日の撮影。偶然だがこうしてみると、この3年間殆ど同じ時期にキツネノボタンを撮っていることになる。桜が終わったこの時期は、新芽を伸ばしきったオニグルミが花を付ける頃で、草本類としてはイネ科程度しか対象が無く、その分キツネノボタンの黄色い花が注意を惹くということだろう。<BR> 場所は前年とほゞ同じトミンタワー前辺りの堤防法尻だが、この年は坂路下だけでなく、その前後の法面や平面にも広がっていて、状態も綺麗なものが多かった。

キツネノボタンは多年草で攪乱が無ければ毎年同じ場所で見られる。花は花の時点で既に若い果実を抱いているような感じで、中心に緑色のイガイガが未だ出来ていないような花は中々見付けられない。逆に言えば、このイガイガが目立つだけに、これだけでこの辺にキツネノボタンがあると直ぐ分るし、花を別の種類と見間違うことも無い。

キツネノボタンは毒草であり、山菜取りで誤って採って、食べてしまうと呼吸麻痺、下痢、嘔吐や幻覚などを惹き起すとされている。
ヨモギに似たような葉で、花も可憐な感じがあるが、あまり触ったりしない方が無難な毒草であることは知っておきたい。


左の2枚は2006年6月4日に京急の鉄橋下で撮ったもの。この当時ミゾコウジュを追っていて、ついでにホソイやミコシガヤなどを撮っていた。そんな時これの気付いて撮ったものだが、その頃にはこれが何なのか分からないまゝ放置されていた。
2013年からこの特集ページの一大改編を行うようになって、過去の写真も参考になるものは掘り出していた。然しこの写真には花が無く、一見したところヒメクグなどかと思ってしまうが、葉が全然違う。草は他種類が入り混じって生えていることが多く、別種の葉を取り違えてしまうケースには注意が必要だが、これに関しては見間違いは無いように認められるので、結局花が終わった後のキツネノボタンだということが分かった。
撮影時期も順に掲載していく原則にしているが、この2枚については参考程度で、古い写真を復活させておこうというような程度で載せたので、敢えて先頭に持っていくことはやめた。

キツネノボタンは別称でコンペイトウグサと呼ばれる。この実を見るとなるほどと理解する。

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