<参考26> 河川敷の春から初夏にかけての草木と花
【タデ科】 ギシギシ属 : ギシギシ
花や痩果の段階で幾分赤味を帯びるという特徴があるものがあり、ギシギシの場合はあくまで緑一色であるとされるので、赤味を帯びた株の場合はナガバギシギシに入れるということにしている。
然し長く浦菊の保全活動に没頭しエネルギーをそこのに割いていたものが、(ウラギクの特集ページに記載したような事情で終息することとなって)、2013年にはそこから開放されたことで、代わりにこの近辺の植物調べを始めることとなり、2014年に掛け2年がかりでこの特集ページ(秋版の参考36を含む)を一大拡充するに至った。そうしてみると、存在感の大きいこの類を避けていることは不自然であり、特集ページの意図(川に出たら目につく草木の花を紹介する)からみても大きな欠陥になることから、2014年にはこの類を撮りまくり、不十分な扱いになることも止む無しとして自力で分類し掲載することにした。
これまで嫌いで済ませ、目を背けてきた草種であるため、観察はまさに一からのレベルで行うこととなり、最終的な分類仕訳の段階に至っても尚、到底この種類を理解し得たとは言い難い。
ギシギシ属は日本ではギシギシ、スイバなどを含む十数種が自生乃至帰化していると言われているが、多摩川緑地近辺(ガス橋から六郷水門までの辺り)で普通に見られるのはギシギシ類で、スイバは小さいせいもあってか殆ど目にすることはない。
ギシギシ属の内、多分普通に見られているのは、ギシギシ、ナガバギシギシ、エゾノギシギシ、アレチギシギシの4種ではないかと思われる。ただこの4種を見分けるための平易で顕著な特徴がある訳ではなく、しかもこれらは通常混在していて、相当交雑が進んでいると想像され、中間的な特徴を有する交雑種も混じっていると考えられるため、それが分類仕訳を一層難しくしている。
2015年に珍しくスイバが良く撮れ、この科を起こすことにしたので、2016年初めに取り敢えず第一報を掲載したが、この仕訳に明瞭な根拠が指摘できる訳ではなく、ただこのような外観のギシギシ類が見られるということを紹介するに留まるもので、仕分けている種名はあくまで参考程度のレベルである。
花の後、明確な果実を作らず、単に種子を皮で包んだだけのようなもので済ませる場合、それを痩果(そうか)と呼ぶ。また、
萼(がく)と花弁が形態的に類似し、ほとんど区別できないような花の場合、それらをまとめて花被片と呼ぶ。(萼にあたる部分を外花被、花弁にあたる部分を内花被いう。)ギシギシ類では花の後、3枚の外花被片は脱落し、3枚の内花被片は翼状になって種子を包む。翼の1枚の中央部が瘤状に膨れるものが多いが、この瘤の意味は良く分からない。この瘤が種子を包んでいる果皮という訳ではなく、内花被片が翼状になったその全体が痩果であり、3枚の翼の中央に種子があって、翼の外側に膨れた瘤が重要な役割を持っている訳ではない。
外来種としてしばしば取上げられるのは、ナガバギシギシとエゾノギシギシで、これらと在来種であるノダイオウなどとの交雑により純粋な在来種の存続が危ぶまれているとの報告をよく目にする。ただノダイオウ自身は人里にはなく、原野の水際などに生えるとされているので、この辺りではおそらく問題にならない。(因みにノダイオウの痩果の翼には瘤が無いとされるので識別は容易である。)
ギシギシ類は風媒花とされるが、実際にはギシギシの茎葉には、驚くほど多くのアリが群がっている。この理由はまったく分からない。ギシギシ類は確かに花の時期には葯を出したりしているが、既に痩果の段階に入ったギシギシにも、驚くほど多くのアリがたかっている。アブラムシで黒くなったようなギシギシも稀に存在し、テントウムシも散見されるが、アリの存在は異様と思われるほど多く、こうして多くのアリが這い回る状況も交雑に影響するのではないかと想像される。
ギシギシの痩果の翼に鋸歯が見られなくなる傾向にあることだけからは、ナガバギシギシとの交雑が進んでいるのではないかと疑わせる。
【タデ科】 ギシギシ属 : ナガバギシギシ
いずれにしても、本来は痩果の側縁が全縁であればナガバギシギシということになる筈であるが、ギシギシの項でみたように、ギシギシの方も鋸歯の存在が完全でなく、鋸歯が認められないからといって、直ちにナガバギシギシであると言い切れないような事情がある、いずれもが中間形であるという可能性もあり、決定打を欠き素人にとって仕分けは容易でない。
【タデ科】 ギシギシ属 : エゾノギシギシ
【タデ科】 ギシギシ属 : アレチギシギシ