<参考36>  河川敷の夏から秋にかけての草木と花


     【オトギリソウ科】  オトギリソウ属 : コゴメバオトギリ

 

コゴメバオトギリはオトギリソウ属の外来種。原産地はヨーロッパで20世紀に入ってから三重県で初めて野性化していることが発見されたという。
今では多摩川でも中流域の方などでは、古いオトギリソウの方は絶滅し掛かっているらしいが、コゴメバオトギリについては、かなり普通に見られるという。ただ汽水域では見た覚えは無く、2015年6月に西六郷地先の低水護岸の段部中央で見付かったのが初めてではないだろうか。
花は比較的大きく、色は黄色で、幾らかまとまって咲いているので見付かり易く、近寄ってよく見れば、花弁の縁に黒点が並び、葉には白点があるなど特徴的な草なので、来ていれば見逃すことは先ずないだろう。

オトギリソウは弟切草と書き、名前の由来には物騒な伝説があるようだ。江戸時代には民間薬(神経痛、リュウマチ、痛風などの鎮痛剤)として知られていたが同時に毒性があることも知られていた。
オトギリソウ科ではヨーロッパ原産でアメリカにも渡っているセイヨウオトギリが有名で、セント・ジョーンズ・ワーストと呼ばれ、薬効、毒性ともきついとされる。セント・ジョーンズ・ワーストは古代ギリシャ以来、主として精神神経疾患の症状緩解に用いられたようだ。現代でも薬効が定かでないものの、その抽出物が医療用に用いられることがあるとも言われる。(SSRI 系の抗うつ薬と同様に使われるらしい。) ただし他剤との飲みあわせに難のある組み合わせが多く、補完用として安易に併用すべきでないとの指摘がある。
コゴメバオトギリ(小米葉弟切)はセイヨウオトギリの変異種と考えられているが、名前の通り葉が小さいことが特徴で、オトギリソウ属は一般に見た目の類似性が強く、区別は容易では無いとされる。

発見したのは2015年6月2日。この日は近年、多摩川緑地の上手端から多摩川大橋手前の緊急時船着場まで続く階段状植生護岸の最下段に点々と見られるようになったイグサの花を撮るのがメインで行ったが、生憎干潮時ではなく、護岸の最下段は冠水して歩くことは出来なかった。
それで家から最も近い、下手にある1株のところで護岸を下って写真を撮ると、又上がって護岸上の散策路を上手に向って歩いていた。川裏に安養寺がある辺りを過ぎた頃、護岸の法面に黄色い花を見付けた。春から初夏に掛けてこの荒れ地側で黄色い花を見るのは珍しい。

6月2日は花弁の端に黒点が並ぶ花を見るのが初めてだったせいで、興味を持って花の写真ばかりを撮っていた。オトギリソウを調べるとコゴメバオトギリのことが出てきて、葉を調べなければ何とも言えないということが分かって、6月5日に干潮時を狙って再度出直し調査することにした。
この間たった3日しか経っていないが、この間雨が降ったこともあってか、何か急に草丈が伸びたような感じがして、オトギリソウ属の花は上の道からは中々見付からなかった。そこで護岸の最下段に降り、下のコンクリート上を行き、上から見上げるような感じで探すことにした。(ここは潮が引いた直後の濡れた状態の時は極めて危険で、泥の上で滑って転び、持っていたカメラを潰した苦い経験がある。)

下から見ると法面を見る角度が良くなって、幾らか陰になっているような状態でも見付けやすい。結果安養寺の線の前後に2カ所あることが分かった。双方は丈が50センチ程度で似たような規模だったが、周囲の草が伸びて日照が得にくくなってきたか、共に藪の中といった感じで精彩を欠いていた。
然し、花や茎葉を撮ることは出来て、確実ではないものの、コゴメバオトギリと考えるのが妥当だろうという結論になった。
茎は想像以上に太くしっかりしている。上の方の葉は概ね小さく、茎に密集していたが、下の方では大き目の葉と小さい葉が混在し、小葉ばかりとは言えない状況だった。いずれの葉も白点は明瞭に見えるものが多いものの、黒点(油点)は殆ど認められなかった。




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