<参考26> 河川敷の春から初夏にかけての草木と花
【キク科】 タンポポ属 : セイヨウタンポポ
タンポポ(蒲公英)類の頭上花は、花びらの1枚々がそれぞれ1つの花(舌状花)になっていて、花びらの数だけ花があることになる。
花が終わって子房が熟すと、それぞれの種子にそれぞれの萼(がく)が変化した冠毛がつき、種子を風に乗せて飛ばす用意をする。タンポポ類の花は、中央部も全て舌状花で出来ているので、花びらが全て冠毛に置き換わることで球状の綿帽子が出来るのである。
左の写真は2006年4月25日の撮影で、場所は南六郷地先。綿毛の先端部が開くと球面が形成されタンポポ特有の綿帽子になる。写真はその前段階の様子。
タンポポ類では普通の花の場合萼(がく)の位置にあたる場所にあるものを総苞(そうほう)という。普通の花では苞は、萼の下の花柄の付け根にある。セイヨウタンポポは総苞の外片が反り返る特徴があり、日本古来のタンポポと見分けるポイントにされる。
在来種のタンポポ(カントウタンポポ・カンサイタンポポなど)は他家でないと受粉しないが、セイヨウタンポポは自家受粉するので、圧倒的な繁殖力を誇り次々に増えていく。
近年在来種のタンポポはめっきり減ってしまい、とりわけ関東では殆ど見付けることが出来ない。
左の写真2枚は参考のため、2016.3.20に狛江市で撮ったカントウタンポポを載せた。
葉には大きな切れ込みがあるが、外来種と在来種を見分けるポイントは総苞片を見るのが分かり易い。
【キク科】 ノゲシ属 : ノゲシ
ノゲシ(野芥子)属は野に咲く芥子(けし)の意味だというが、ヒナゲシやポピーで知られるケシ類とは全く似ていない。ノゲシはタンポポと同じキク科タンポポ亜科に属し、実際花はタンポポに酷似している。ただこの時期にはタンポポ特有のロゼット(茎が見えず根生葉が地面に放射状に広がる)姿ではなく、伸びた茎に葉がつき背丈は50センチを超え、1メートル近くになるものもあるので、タンポポとの違いは明瞭である。
ノゲシの綿毛はタンポポのように先が数本折れ曲って、全体が球面を作るような態ではなく、直毛タイプである。透けて見える疎らな感じはなく、柔らかそうな毛が密集し不透明に近い球となる。
この特集ページを始めた2003年頃は、安養寺から多摩川大橋までの間、堤防法面にはノゲシは普通に見られたが、その界隈のノゲシは2006,2007年の堤防の拡幅大工事によって完全に消滅した。
左の2枚は多摩川緑地の堤防下での撮影。撮影日は上が2014年4月5日、下は同年4月12日。
撮影は秋で撮影日は、上の3枚が2015月11月3日、下の2枚は2週間後の16日である。アキノゲシというわけではなく、ハルノゲシだろうが、こうしたノゲシはほゞ年中咲いているようなものである。
昭和初期に、鈴木新田字江戸見崎の北側に埋立が拡張されたが、(この江戸見町は逓信省に買収され飛行場用地となった)、江戸見町沿岸と海岸線の間700メートルほどの間は海老取川の河口延長水路のような格好になった。ここは海老取運河と呼ばれたりもするが、現在では弁天橋口から海老取運河の端までの全長2キロメートルほどの全域を海老取川と称しているようである。
海老取川はその全体が潮汐に応じて水位が変動する感潮河川であるため、潮の干満に左右され平時には川がどちらに向って流れているのか判断が付かない。そのため、この川の上下はどうでもいいのではないかと思いがちになる。然し一旦洪水となれば、猛烈な濁流が弁天橋口から森ケ崎方面に流れ下る。この様子を一目見れば、弁天橋口を合流点などと無責任なことは言えなくなる。
波しぶきを浴び、強い潮風に吹かれるような厳しい環境に耐える特性があり、他に草花などが存在しないような場所に生えている。
多摩川の汽水域では、空港敷地の沿川部(国際線ターミナルの近傍)の一部にのみ存在する。空港敷地の沿川部(海老取川分流口から海側)は、直轄改修工事ではあまり弄られていないようだが、堆積が進んで岸辺はかなり広く洲が発達して、干潮時には干潟になるが、右岸側ほどは広くはない。
ただ元羽田東急ホテルがあった場所の下手に、起原は不明ながら奇妙な形の張り出し部があって、礫河原というより岩場に近い状況になっていて、その窪んだ入江のような場所で、岩や瓦礫の間に溜まった土にハチジョウナが生えている。
工事のことについて試しに京浜河川事務所に聞いてみたところ、「河川区域及び河川保全区域外の工事なので、京浜河川事務所では把握していませんので、詳細は担当部署の東京空港整備事務所 第一建設管理官室にご確認下さい。ちなみに工事内容等、公になっているものはないそうです」というツレナイ返事があった。(東京空港整備事務所というのは国交省関東地方整備局内の1部局)
写真は良いところを狙って撮るので、全体の印象は分かりずらい。この頃にはもう猛暑が始まっていて、寒さに強いハチジョウナだが暑さには弱いとみえ、萎れかかっているものが多く、観察会の折に多くの葉が密集して、ここが本命などと考えていた部分は、花どころではなく殆ど全体が消滅しかかっている有様だった。そんな中でも、咲いている場所もあり、花は大きく既に綿帽子となっているものもあって予想以上の成果だった。