<参考26> 河川敷の春から初夏にかけての草木と花
【キク科】 キオン属 : ノボロギク
この手の(無いように見える)花でも、花後の綿帽子はその割りに大きく、ちゃんとした球形のものを作るので、これも勉強しないと理解し難く、違和感を感じてしまう。
【キク科】 ハハコグサ属 : ハハコグサ・ウラジロチチコグサ・チチコグサモドキ
ハハコグサが見られたのは2007頃で、安養寺前辺りの堤防法面に多様な種類が見られた時期で、その後はこの近辺では見ることは無くなった。
左の写真は全て、2015年5月20日〜25日に、多摩川緑地の水路側散策路と、京急鉄橋下から六郷橋下に抜ける小道に沿うあちこちで撮ったもの。
原産地はウラジロチチコグサが南アメリカで、チチコグサモドキは北アメリカらしいが、既に現状では汎世界的に侵略的に広がっているという。
秋に咲くものとしては、オオアレチノギクやヒメムカシヨモギなどがその代表格といえるが、春に咲くものの中にも似たような花がある。それがこのノボロギクだ。
イネやムギなどの伝来に伴ってやってきた古い帰化植物ではなく、明治になってヨーロッパから移入した外来種とのこと。よく見れば筒状花だけでも、それなりに可愛いと言えなくはないが、一寸見にはこんな鑑賞に不向きと思われるような種がどのようにして持ち込まれてきたのか不思議とも思える。
この界隈でノボロギクはそれほど多く見られる訳ではない。この写真は、2014年初めに多摩川緑地の下手の側の堤防下の法尻から通路までの間で意味不明の工事が行われ、仕上に芝マットを載せるために持ち込まれた土から多種の草種が芽生えた時期、ノボロギクもその中にかなり多く混じっていた。
周囲に舌状花(花弁)を広げる、普通一般の野菊などでも、実際には舌状花は飾りの役割でしかない場合が多く、花後は御用済みで枯れて脱落してしまう。
種子形成を担うのは中心部にある筒状花の方で、花後に種子が熟する頃までに、筒状花の奥の方から白色の冠毛を伸ばし、やがてガク(総苞片)が付根まで開裂して冠毛を球形に広げる。
要するにどのキクもガクや筒状花は同じような大きさがあって、花後その先に冠毛を伸ばしたものが準備段階で、機が熟してガクが付け根まで裂け、痩果を擁した冠毛が球状に展開したものが綿帽子なのだと考えれば、この手の花が特段に無理をして大きな綿帽子を作っている訳ではないことに納得がいく。
筒状花がこの位あれば、冠毛を伸ばして綿帽子を作ればの程度の大きさになると、理屈では分かっていても、こうして花と並んであると、やはり花と比べて綿帽子が異様に大きく感じてしまい、正直言って違和感が否めない。
ハハコグサという和名は、広辞苑でも母子草として載っていて、自然にそう書かれる例が多いが、和名の由来は茎や葉に密生する白い綿毛が「ほおけ立つ」(蓬け起つ:ほつれ乱れて伸びる、毛羽立つ)ことから「ホウコグサ」と呼ばれていたものが訛ってハハコグサになったとする説明を見かける。
ハハコグサの花はキク科の中でもかなり変わっている。小さな筒状花が集まって頭花を形成しているが、中央部は両性花でその外周に細い管状の雌花が並ぶ。全体に薬草という印象のある草種である。
ちなみに各例を数種挙げておくと、稲作に伴う帰化種には、イヌタデ、メドハギ、ヨモギ、オナモミ、オヒシバ、メヒシバ、カゼクサ、チガヤ、チカラシバ、キンエノコロ、イグサなど、麦畑に伴う帰化種には、ハハコグサ、ハコベ、ナズナ、カタバミ、サギゴケ、ヤエムグラ、ジシバリ、カラスムギ、カモジグサ、ツユクサなど、双方に関係しない帰化種としては、ヒガンバナ、ヤブカンゾウなどが挙げられている。
最初の写真のように塔状に立ち上がった集散花序の高さは20センチ位。
開いた総苞片の内側は白く、離れてみるとこれが花弁で、白い部分が花が咲いているように錯覚する。
種子は10本近い綿毛を付け、種子はその中心にあって蜘蛛に似たような感じになっていることが分かる。
ここの8枚の写真は、2015年6月7日の撮影で、大師橋緑地先の水際の荒地で、シオクグの実やクサイの花を撮ろうと思って行った折に、偶々堤防から河川敷に降りる坂路の法面に群れているのを見て撮った。
既に花は無く全て果実の状態になっていたが、これまでノーマークだったので仕方ない。ここで大量にあったことでその存在に気が付き、この後あちこちでチラホラ見付けたが、もう皆同じ果実状態だった。