<参考26>  河川敷の春から初夏にかけての草木と花

 

     【キク科】  ニガナ属 : イワニガナ・オオジシバリ

 

春の法面で背丈の低い黄色い花は、タンポポだけでなくニガナ属の多年草(オオ)ジシバリ(地縛)の場合もある。遠目にはタンポポに似て見えるが花は少し大きい。頭上花はタンポポのように半球状にならず、20〜30枚の舌状花が二重程度に展開する。
同属の種別は根生葉の形で見分ける。スケボー広場近くでは、葉が丸みを帯びたスプーン状でジシバリ。トミンタワー前辺りでは、葉はヘラ状で幾分角ばり波打ちもあるのでオオジシバリ。(ただ双方は花の大きさに差はなく、実際には交雑が進んで、図鑑が示すような厳密な種別は意味を失っているかもしれない。)

左の写真は上の1枚目は2008年4月末で、前年に堤防拡幅工事後の持ち込まれた植生で、マツバウンランが大フィーバーとなったトミンタワー前辺りの堤防法面で、この年は法面の一部で2ヵ所イワニガナ(ジシバリ)の群生が見られた。
この辺りは前からジシバリやオオジシバリが見られた場所ではあったが、これほどの群生はこの時が初めてで、遠目にはカタバミかなと思って近付くとジシバリの綺麗な集合だった。(実際この年法面にはカタバミの群生する場所もあった。)
正直に言えばジシバリとオオジシバリの区別には自信は無い。ただこの界隈では、花の大きめのものと小さめのものが見られるので、単純に大きい方をオオジシバリとしているに過ぎない。
2枚目は同じ2004年の4月下旬に上の群生地よりやゝ下手の法尻を外れた平面の方で撮った。多摩川緑地の上手に隣接して大田区民広場と称されるトラックを擁した広場があり、多摩川大橋の側から下って川は大きく右に湾曲し、その間区民広場に至るまで(安養寺の前辺りまで)は河川敷は狭く、草地になっていて多様な草花が見られ、その中にカタバミもありジシバリもあった。

以前はこの類は多摩川緑地より多摩川大橋に近付いた辺りの堤防側にしか見られなかったが、2013年の調査時には、六郷橋近傍から南六郷側(六郷橋緑地)の護岸縁まで予想外にこの手の花が見られるようになった。
2枚目と3枚目の写真はいずれも六郷橋より下手側の護岸縁などで4月10日に撮ったもので、こちらで見られたものは全て花が小さめだったためこちらに載せた。

2016年の春に、ジシバリとオオジシバリの区別は葉の違いに着目すると教わった。
ジシバリの葉は丸乃至卵円形で葉柄が長く、一方オオジシバリの葉はヘラ状乃至楕円形で、時として葉柄に近い部分に羽状の切れ込みが入ったりするらしい。
2015年までに載せているここの写真の仕訳はいい加減だが、今後は葉をよく観察して、識別した上で載せるようにしていきたい。


左の写真の1枚目は未だ堤防工事が行われる前に、ヤマハボートがある近傍の法面側にいつも出ていたものを2004年4月16日に撮ったもので、この辺りには大きめの花が綺麗に咲いている場所があって、深い検討も無くオオジシバリとしていた。

左の2枚目は堤防大工事後の2008年4月29日の撮影で、上のジシバリの方に載せている2枚目の一部をズームで撮ったものかも知れない。同じものとすればこれをこちらに載せるのは好い加減なものだが、オオを付けるかどうかは、私にとってはその程度のことでしかない。

3枚目と4枚目は共に今回調査を行った時点で、トミンタワーの近傍の法面か法尻辺りで撮ったもので、この大きさの花は伝統的にここにあったものと同じで、南六郷の方で見られるようになったジシバリとは明らかに品格が違い美しい。

群生というほど多くの花は無かったが、ポツリポツリというほどではなく、綺麗な花を撮れるだけの安定度は十分感じられた。

 


 

     【キク科】  ハルシャギク属 : ハルシャギク・オオキンケイギク

 

放置された花壇や、雑居花壇の終末風景として、北米原産の帰化植物ハルシャギクが乱舞しているケースをよく見かける。
ハルシャギクは花弁が黄色いコスモスに似た花で、輪生の羽状葉に独特な芳香をもつ一年草。花壇を逃げ出し、今では河川敷でも野生化したものがパラパラ見られるようになった。
痩せた土壌に強そうなので、広がりそうな予感がする。

これは2006年9月の写真。南六郷地先で本流と岸側の干潟を仕切っていた中洲で一斉芽生えが起こり、百花繚乱の状態になった時の貴重な画像。
当時の中洲は未だ満潮時には全表面が水没する高さでしかなく、表面にコケが生えても直に洗われて又地面に戻るなどのことを繰返していたが、2004年に初めて実生から芽生えたと思われるヨシが定着し、翌年から広がりを始めつつあったが、2005年までは中洲表面の大半は未だ裸だった。
ところが2006年に中洲の高いところの表面で一斉に芽生えが起こり、イセウキヤガラ、カヤツリグサ、ウシオハナツメクサ、ヒメガマなどの湿性植物だけではなく、スカシタゴボウレベルの湿った土地を好む種類も多く生育し、正に百花繚乱状態が出現した。その中にあったハルシャギクの写真である。
百花繚乱状態はこの年限りで、翌年は一部でイセウキヤガラの抵抗はあったものの、大半の部分はヨシに制圧され、2008年以降は完全なヨシ群落となって、2013年にはそれまで空いていた六郷橋側のヨシ群落との間も繋がって双方は一体化したように見える。

ハルシャギク自体は多摩川汽水域の高水敷で珍しいものではない。幾分盛衰はあるので同じところで何年も続いたり、どんどん広がっていくという印象はないが、大抵6月頃にはあちこちで普通に見られる。
左の3枚は2013年6月18日に多摩川緑地から多摩川大橋に向う護岸縁で撮ったもので、この年には京急の鉄橋下で初めて群生が見られるなど、結構繁栄した年だった。



ハルシャギクは例年どこかで大発生し、六郷界隈ではハルシャギクが群れて風にそよぐ光景は珍しいものではない。2015年には京急鉄橋の下、堤防下の通路からバイオリン公園の脇を通って水路に向かう小道沿い一帯に群れていた。
敢えて撮ろうと思ったのは、中心部が紅く周囲が黄色いオーソドックスな色合いのものの中に、ほゞ赤一色という花が散見されたためで、6月24日に、オーソドックスは色のものの中に、僅かながら、こんなのもあったという意味で撮っておいたのが、左に載せた3枚である。



左の写真は2016年6月27日の撮影で、場所は多摩川大橋下手左岸に作られている緊急時船着場の下段側。下手側になる下段側は常時雑草に蔽われているが、この時は一面にハルシャギクが咲き乱れていた。

 


 
オオキンケイギクも北アメリカ原産の帰化植物で、花が綺麗なので栽培目的で導入されたものだが、ワイルドフラワーとして河川敷や法面の緑化の利用されたりしたため野化したものが、カワラナデシコなどの在来種を侵すことから特定外来生物に指定され、植栽は勿論、野生化してあるものを勝手にいじることも禁止の対象になっている。
下の載せたアラゲハンゴウソウ同様、環境省の特定外来生物一覧では、ハルシャギク属の全てが種類名証明書の添付が必要な生物に指定されている。この写真も2013年7月に下のアラゲハンゴウソウ同様ガス橋下手の川沿いの荒地の中で撮った。(上の2枚は7月だが、3枚目は11月初めの様子である。)



左の2枚の写真は、2016年5月16日の撮影。場所は多摩川緑地のある左岸西六郷の堤防で、裏側の法尻付近。ガス橋の下手からは数キロメートル川下になる。花は数輪だったが、蕾は結構な数あった。
ここまでの中間には多摩川大橋近傍の草花豊かな場所があり、その辺りでは未だオオキンケイギクを見ていない。またこの辺の堤防は裏側の法面が、道路になっている地表からは高さ1.5メートルほごがコンクリート張りになっていて、その頂上部に近隣の住民が植木鉢を置いたりしていることがあり、この一カ所だけで、遂にこの辺りまでオオキンケイギクが来た、ということになるのかどうか一概には言えない。
ただこの近傍でこの花を見るのは多分初めてであり、この数株がキッカケとなって、この後一気に広がっていく恐れが無いとも言えない。


 


 

     【キク科】  オオハンゴウソウ属 : アラゲハンゴウソウ

 

オオハンゴウソウはキク科の多年草で原産地は北アメリカ西部。明治中期に観賞用に導入され、ワイルドフラワー用の園芸種としてルドベキアの名前で流通した。その後野化して現在では全国に分布する。日光戦場ヶ原、奥入瀬渓流など貴重な湿性環境にも侵入が見られ、発見次第駆除すべき対象の特定外来生物に指定されているが、国立公園などでの在来植生への影響が懸念されている。

アラゲハンゴウソウはオオハンゴウソウ属の一種だが、環境省の特定外来生物一覧では、オオハンゴウソウ属は全て種類名証明書の添付が必要な生物に指定されているので該当する。
7月前後に開花する。花径は8cm前後、草丈は50cm程度か。
昭和の初め頃渡来し北海道の牧場や東北地方の原野に定着した後関東に広がり、現在では近畿地方や四国にも野生化したものが見られるとされる。

左の写真は2013年7月にガス橋下手の川沿いの荒地の中で、一部人為的な関与が伺われる雰囲気のある辺りに”自生”していたものを撮った。



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