<参考36>  河川敷の夏から秋にかけての草木と花


     【ツユクサ科】  ツユクサ属 : ツユクサ

 
ツユクサは河川敷で結構多く見られる。ただ露草の名前は朝露に由来すると思われ、アサガオほどではないものの、咲いているのは精々昼前までで、午後には花は凋んでしまっていて、群生の様子は全く異なったものになっているので要注意だ。
原産地は東アジアで、日本にも古来よりあって、儚い恋の表現として万葉集などにも多く歌われている(当時の名称は月草)。外来種ではない訳だが、背丈は低く、茫々の荒地で競合出来るようなタイプではないので、川沿いで生育できる環境はそう多いということはない。
その一方何故か、堤防の改修などが行われて、新しい芝が植えられたりした直後の法面で、アメリカイヌホウズキなどと共に見かけるケースも多い。

ツユクサの花期は6〜9月で、夏の間咲いている訳だが、休日などに午前中出て歩かないと、お目にかかれない。
左の写真上から3枚は初めてツユクサを撮った時のもので、2013年10月6日の撮影で、時刻は11時49分と記録されている。この時刻でも未だこの程度(半分以上)咲いているという証拠になる。
場所は多摩川緑地の水路側の土手下を行く散策路沿いで、カキノキのマサキの中間辺りの土手の法尻にやゝまとまってある。

ツユクサの花は青紫色の2枚の花弁が目立つ、小さい綺麗な花だが、花の構造は結構複雑だ。2013年には撮り始めた時期が遅く、仔細については分からずに終わってしまった感があったので、翌年には詳しい構造が理解できるようなズームを撮ることを目標にした。

ここから下の写真13枚は全て2014年の撮影。左の1枚は7月27日の撮影で、場所は前年の上の場所と同じ位置。

ここからの3枚は8月3日の撮影。時刻は9時台の前半。いずれも日曜日で午前中に出てはいるが、それほど早くには出れていない。



ここからの5枚は9月5日の撮影。時刻は9時台の後半。色々な角度で撮ってみてはいるが、中々全体の構造は掴みにくい。
緑色の2枚貝のような苞が開いて花を出す。花弁は上側の青紫色の2枚が際立つが、下向きにも1枚白い花弁があり全部で3枚。白い花被片の後ろに3枚の白い半透明の萼片がある。
長い花糸が下向きに3本あるが、1本はメシベで葯を付けたオシベが2本並ぶ。オシベはこの長い2本の他に中途までの1本と付け根近くに留まる3本の合計6本がある。この3種のオシベに付く葯の形は異なる。主要な葯は長い2本に付くもので、中間までの1本の葯は花粉が少なく、短いオシベに付くπ字形の葯は全く花粉を出さない飾りの役目だと言われている。





ここからの4枚は9月15日の撮影で、最初の2枚が7時台後半の撮影、後の2枚は8時台後半の撮影。 9月14,15の連休に西六郷の護岸のアサガオを撮影しようと思い、14日には8時台に出たが、既にその時間帯では色が褪せ気味と感じて、15日は一念発起してやっと7時台に家を出た。
アサガオのお蔭で朝出ることになり、最初の2枚は行く途中で撮り、後の2枚はアサガオを撮り終えた後の帰りがてらに又撮ったためこの時間になった。ツユクサの場合には7時台でも8時台でも色合いに殆ど差は感じられない。




ここからは日中のツユクサや花後のツユクサについて見ておく。
ツユクサの花については2013年に撮り、2014年にも何日か追いかけて結構写真を多く撮った。とった写真は2014年にこのページに上げていた。然し他の種類の整理に追われてコメント欄は白紙のままだった。2015年の秋には未だそのような写真だけが上がっている種類は結構多かったが、何故かこのツユクサの午後の姿の事は記憶に薄かった。そのせいで、午後のこの草を撮って、再び先生に種名を聞くという醜態を演じてしまった。
ツユクサの花のイメージが明瞭で、逆に言えば2枚貝のような苞葉についての記憶が鮮明でなく、殆ど午後にばかり出歩いていることから、この苞葉の群集を見ても、ツユクサのことを思い起こすまでに至らなかった。
自分の苦い経験から、似たような人が出ないように、2015年9月には、あえて花の無い午後のツユクサを積極的に撮って、追記として載せておくことにした次第である。(左の写真1枚は、2015年9月20日、トビハゼの生息地として貴重な、右岸の殿町にある湾入部が堤防工事後どうなったか確認に行った序に、そこの堤防法面で撮った。どこにでもあるという例であり、深い意味は無い。)

左の写真1枚は、9月26日に左岸の多摩川大橋上手の低水護岸縁で撮った。時刻は午後3時半過ぎで、勿論花は咲いていないので、特に注意を払っていなければ通り過ぎていくところだが、花の無い時間帯のツユクサの姿をすっかり忘れてしまっていた醜態を曝した後とあって、特に気を付けていたので、ここでも何枚か写真を撮った。
よく見れば2枚貝のような特徴的な苞葉の端に青紫色のものがチラチラ見えている。そこで全体的な景観だけでなく、もう少し細かく見ていこうと思い、前に撮った写真を見直すと共に、新たにズーム写真も撮ることにした。

ここからの2枚は9月20日に、羽田空港沿岸部の500メートル地点辺りにある、ガレキの多い湾岸のような形をした低水路の岸辺で撮った。この日は多摩川ではこのガレキの浜だけに自生するハチジョウナを撮ることを目的に訪れたものだが、醜態を曝す前の時点で、この花がツユクサの午後の姿であることに気が付かないままに、新しい花として種名のお伺いを立てる目的で撮っていたものである。

左の1枚は苞葉のほゞ真上から見たもので、中が少し見えている。苞葉の端の外側には、終わった花の痕跡が見えている。先端に見える白毛は、メシベかオシベか分からないが、役割を終えた後のいずれかの花糸が巻き上がった残骸と思われる。青紫色の花弁は凋んで縮まり、半透明の萼片がこれらを被い仕舞う前段階の姿と思われる。
一方苞葉の中には若い果実と思われるものが一つ見えている。

これは苞葉の横から見たところ。やはり端の方に手自仕舞った花の痕跡が見られる。縮めた花弁などを萼片が包み込もうとしている。

ここからの3枚は日が遡った9月20日の撮影分で、場所は六郷橋緑地の六郷水門寄りで堤防強化改修が行われた南六郷の堤防法面。珍しいベニバナボロギクを見たり、アメリカイヌホウズキを撮りまくったりしていた中に、思い出せないまゝのツユクサも撮っていた。この一枚は終わった花一式が苞葉の中に仕舞いこまれていくところ。

ツユクサは一般に苞や葉は無毛だが、苞葉に毛のある変異種の存在が知られていて、オニツユクサ、ケツユクサ、ハマツユクサなどと呼ばれる多様な例があるらしい。

これは苞葉がかなり開いて中が丸見えになっている。若い果実の元のようなものが二つ、白いものは花の残骸を包み込んだ萼だろう。

ここからの3枚は、醜態を曝した後になって、敢えて午後のツユクサを撮ってみようと開き直って、苞葉の中が見えるようなものを選んで撮ってみたもの。2015年9月28日、ツルボやニラ、ヒガンバナなどの果実化の様子を撮りがてら、多摩川緑地の水路側の土手下の散策路を通り、色付き始めたカキノキを撮ったりしながら、ツユクサを撮って回った。
左の1枚は未だ花弁を丸め込んだ萼が完全に閉じきっておらず、僅かに濃紺の色が覗いている。

撮っていくと、2枚貝と思っていた苞葉の中に、半ば開いているようなものが結構多くあることが分かった。大抵大きな若い果実を持っているが、まだ熟しきって破裂し種子を放出するには間があるように見えるが、何故かしっかりと抱込んでいるものは少なく、果実がものこの程度の大きさになると、苞葉が締めきれない感じで、咲く前の閉じた様子とはかなり異なる印象だ。


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