【キンポウゲ科】 センニンソウ属 : センニンソウ
このセンニンソウは空港沿岸部に2度目に行った7月20日の帰り掛けに、偶々1.1キロ辺りの堤防上の草地で撮った。
主要な目的であったハチジョウナは撮った後で、暑かったこともあって帰りを急いでいて、別に植物を探す程の余裕があった訳ではなかったが、護岸の法面の上面の角に当たるような場所で白い花がよく目立ち、ママコノシリヌグイと混じりあうような感じで低く広がっていたので、何だろうという気持ちで自転車を降りることにした。
センニンソウ属は総称してクレマチスと呼ばれ、原種は北半球に広範囲に分布し数百種あるという。日本ではクレマチスというと園芸種名として有名だが、世界的に人工交配種が作られていて、様々な色や形、大輪のものや八重咲きのものなど品種の数は千を超えると言われる。蔓性植物の園芸種というのはピンとこない気がするが、日本独特に鉢植えに仕立てられたものもあるらしい。(アレキサンドライトなどの園芸種を見ると、花はセンニンソウとは全く似ていない。)
2013年まで、ガス橋下手の左岸に続く荒地は、夏場には一面がクズに被われていた。ところが2014年には下手側から広がってきたアレチウリの勢力が優勢となり、ガス橋下手の荒地もほゞ一面がアレチウリに制圧される状況となった。クズの花は大きく派手で綺麗な花だが、密集した群生の中で咲いているので、外見からでは中々見付からないものである。
果実はそれぞれが痩果で、やがて扁平な卵形になっていくようだが、ここでは皆同じような感じで、扁平化への兆候を見せているようなものは見当たらなかった。
(これを撮った場所は空港敷地の沿川部で家からは遠く、この時まで多摩川緑地界隈では見たことが無かったので、この種はこの花の写真で終わり、この後を追跡できるという確信がなかっため、とりあえずは「春から夏」という方に載せいたが、同じ2015年の9月21日に5枚目以降に載せた写真を、多摩川大橋の上手の方で撮ることが出来たので、晴れて本来のこちらの「夏から秋」の方に、キンポウゲ科を新設して載せ換えることになった。)
センニンソウは外来種ではなく、東アジアが分布域で日本にも古くからあってボタンズルやカザグルマなどと呼ばれる幾つかのものがある。全草が毒草で、葉や茎の毒(プロトアネモニン)は民間薬として外用専用で利用される。葉を揉んで皮膚に貼ることで扁桃腺炎の治療に効果があるらしい。(漢方薬では根を乾燥させたものを威霊仙(いれいせん)と称し、神経痛やリウマチなどの治療用に生薬として用いるらしいが、この場合の主成分はサポニン。)
(矢口ポンプ所の排水路が河川敷を分断する場所で、堤防下の管理道路が水路を跨ぐ橋を矢口橋という。)
このセンニンソウを撮ったのは同じ場所で、クズの群生した葉の上に出て咲いているものを見付けて撮った。肝心のクズの方は花は皆枯れていて、枯れてからかなり日が経っているような感じだったので、8月下旬の気温の急落時に枯れたのかもしれない。
(しかし折角思い出したので、忘れない内にということで、翌日早速空港敷地のセンニンソウを見に行くことにした。)
撮影日は2015年9月22日。センニンソウはもう後は果実を撮るだけと思っていたが、この日に偶々遠出するチャンスがあって、時期的には未だ早いかとは思ったが、センニンソウも見てみようと思った。前回花を撮ったのが2か月も前で、花自身が時期的に早いと感じられたので、果実の生成も早い可能性もあるのではないかという期待があった。
前回は早かったので、先行した一部で花を見たようなことだったのだが、この日に行ってみて実は当地のセンニンソウの株数は相当大きいものだと知った。上手側の日航の慰霊碑のある場所から下手側の改修された船着場の手前まで、300メートル近くの距離があるが、この間水域に沿う小道の護岸縁は、ほゞセンニンソウとヤブガラシの混生群落で、センニンソウが延々と続いて見られる。
普通一般には、果実が若い内は緑色で、熟していくに従って赤味を帯びていくと考えがちだが、センニンソウの果実の場合、ヒゲの発達具合などを参考に判断すると、必ずしも熟すに応じた変色とばかりは言えないという印象で、不思議な感じがした。