<参考36> 河川敷の春から初夏にかけての草木と花
【オオバコ科】 オオバコ属 : トウオオバコ・オオバコ
先日は慌てていたせいもあって、護岸縁の1株しか見なかったが、出直した日に周りを良く見回すと、近くには少なくともトウオオバコが4,5株はあることが分かった。
刮ハは熟すと、上半分が蓋のようになり、これがが外れて、中の種子が弾けるようになっている。そのことからこのような刮ハは蓋果とも呼ばれる。
上と左の2枚の写真はこの時見た株を撮ったもの。根元は水が来ていて接近はできなかった。葉は虫に喰われてか勢いが無く、敢えて足を濡らしてまでここの株で詳細観察をしようとは思えなかった。
左の全景は護岸縁の一株で、もう藪に囲まれて苦しい状況だが、これでも凌げるのか、来年はもう衰亡してしまうのか不安な状況だった。
左の写真、上から6枚は2015年秋に大師橋緑地の上手側の端(本羽田1丁目)で、トウオオバコを撮りに行った2度目の時(8月13日)に撮った。グランドはここよりもっと下手にあって、ここは刈られた場所と藪化している場所との境界辺りで、かなりまとまってある場所だが、大師橋緑地は水側以外は殆どノーマークだったので、クサイの花、アカメガシワの雄株、イセウキヤガラ、シオクグなどを撮る際に、何度も通っていたため惜しまれる。(2015面の大師橋緑地関連では、堤防を昇降する坂路沿いの法面で、目に付き易かったため、チチコグサモドキを撮っていた。)
唐の字が頭に付く種名だが、実際には日本の固有種らしく(学名:Plantago japonica)、普通海岸に生えるものらしいが、ここは本羽田1丁目で多摩川の汽水域になる。
この辺りには古くからオオバコ類が見られたらしく、「川と干潟の道」ポイント3として「グランドの植物」という表題の看板が河川敷に残されていて、その真ん中にオオバコが載っている。この看板はもう擦れるほど古めかしいが、この看板の存在に気が付いたのは左の写真を撮った2015年7月のことで、いつ頃からあるものかは知らない。(この看板の位置は、2015年には既に草深い藪の中になっていて、立てられた当時の散策路は既に消滅してしまっている。)
看板はグランドの植物という表示で、ここに載っているオオバコはシロツメクサなどと並んでいることから、普通のオオバコのことを指しているものと思うが、古くからこの辺りにトウオオバコが見られたのかどうかは分からない。2015年現在までの近年の多摩川の汽水域では、この場所の水辺以外でトウオオバコを見たことはない。
シオクグも日照を奪われ、種子を残していたのは2ヶ所のみだった。下手側から分け入ったが、ヨシに覆われた中からやっと抜け出た場所で、護岸の縁にオオバコの化物のように大きなトウオオバコを一株見付けた。
この日はシオクグがすっかりヨシに埋没してしまった環境の変貌ぶりに、気持ちが捕らわれてしまっていて、トウオオバコはおざなりの撮影で済ましていた。
葉は先の尖った卵型で、全て葉柄を有する根生葉。引き締まって斜め上方を向いている。この辺りで見られた株は皆大体同じような大きさで、花茎も同じように5,6本は立てていた。一株中の花穂の進捗状況は一様では無く、未だ細く短く緑色一色の花茎もある一方、メシベを出し受粉を終えて、次に4,5本のオシベを出して長く伸ばし、葯を展開している花の花茎もあり、更に既に花を終えて子房が膨らみ始めた段階のものが鈴生りという花茎までが混在している。
水際で足場は悪く、花枝が長いこともあって、全景をとるのは容易ではなく、幸か不幸か写真はズーム主体の撮影になった。
下手側はどこから入ればよいか、これもはっきりしないので、幾らか安全をみて十分下手と思われる辺りで護岸に出ると、幸いにして、何とそこの水辺にも別のトウオオバコが3株ほどあるのを発見した。
ただ惜しむらくは、花がもうどの株にも見られなかったことだ。
予想通り既に蓋果が既に熟しきって、蓋を外しに掛かっているものが見られたが、予想外に若い果実も見られ、花後の様々な段階の果実が混在している状況に変わりは無かった。
その格好から容易に推測できるように、踏み付けには強い一方、丈の高い草に囲まれてしまえば日照が得られない。従って存在場所は自ずと限定され、道脇などが主要な場所で、河川敷では散策路の近傍で芝やクローバーが途切れたような場所で、除草があって藪化しにくく、また人の通行があって踏み付けに弱いような種が生育しにくいような場所に展開する。
岸辺の散策路沿いの脇地でも、除草が見送られたりして踏み付けがなくなれば直ぐ藪化し、散策路自身が通行不能になってしまうケースも珍しくないが、逆に除草があって通路脇が低い草地になっているような場所では、オオバコの展開が見られるケースが多い。
多摩川大橋の下周辺にオオバコがあるのは知っていた。然し本羽田で8月13日に既に花が終わっていたという経験が染み込んでいて、もう今年は遅すぎると思い込んでいたため、ろくに調べず通り過ぎていた。
やっぱりここも撮っておこうと思い直したのは、下手の非常時船着場でイヌタデを撮り、上手に向ってヒメツルソバを撮ったりしていた時で、折角通るところだからと思って撮ってみた。この辺は花期が遅かったようだが、もう11月下旬ということで、流石に花は無く花枝は果実だらけで、しかも茶褐色に熟し種子が飛んでいるものも少なくなかった。
この時期で未だこのような状態なら、10月過ぎ位でも十分花が見れたのではないかと悔やまれた。オオバコは地味な存在で花は気付き難いが、場所によって花期は差があり、トータルとして花期は相当長いということを知らされた。